本稿の目的

本稿は社会ネットワーク分析(SNA: Social Network Analysis)の概要をまとめたものである。また、Rでこうした分析を実行する方法についても解説している。新たに個人的に勉強した内容があれば、随時追加していく。

近年、動物行動学や霊長類ではSNAの手法を用いた研究が増加しており(Sueur, Jacobs, et al., 2011)、Primates誌でも2019年に特集号が組まれた(Puga-Gonzalez et al., 2019)。図0.1は、動物行動学や霊長類学の分野で著名な学術雑誌において、“social network analysis”という単語を含む論文の割合がどのように変化してきたかを、Google scholarを用いて調べた結果を示したものである(2023年1月22日時点)。私たちが普段読むことが多いこれらの雑誌においても、2000年代後半以降社会ネットワーク分析を用いた論文が増加していることが示唆される。

こうした論文を適切に理解するためにも、SNAについてある程度理解することは必要だろう。また、自身のデータを解析する手法を増やすことで、従来の分析方法だけでは言えなかったことを説得力のある形で示せるようになるかもしれない。

socail network analysisという単語を含む論文の割合

図0.1: socail network analysisという単語を含む論文の割合


本稿で扱うのは、以下の内容である。

  • 社会ネットワーク分析の概要(第1章)
  • rawデータからマトリックス(隣接行列)を作成する方法(第2章)
  • 各ネットワーク指標の解説と算出法(第3章)
  • ネットワークデータでの統計分析(第4章)

参考にしたのは主に以下の文献である。
なお、本稿の作成に使用したファイルとRのコードは筆者のGithubですべて閲覧できる。

References

Borgatti, S. P., Everett, M. G., Johnson, J. C., & Agneessens, F. (2022). Analyzing social networks using R. SAGE.
Croft, D., James, R., & Krause, J. (2008). 動物の社会ネットワーク分析 (島田将喜., Trans.). 東海大学出版部.
Farine, D. R. (2017). A guide to null models for animal social network analysis. Methods Ecol. Evol., 8(10), 1309–1320.
Farine, D. R., & Whitehead, H. (2015). Constructing, conducting and interpreting animal social network analysis. J. Anim. Ecol., 84(5), 1144–1163.
Puga-Gonzalez, I., Sosa, S., & Sueur, C. (2019). Editorial: Social networks analyses in primates, a multilevel perspective. Primates, 60, 163–165.
Sosa, S., Puga-Gonzalez, I., Hu, F., Pansanel, J., Xie, X., & Sueur, C. (2020). A multilevel statistical toolkit to study animal social networks: The animal network toolkit software (ANTs) R package. Sci. Rep., 10(1), 12507.
Sueur, C., Jacobs, A., Amblard, F., Petit, O., & King, A. J. (2011). How can social network analysis improve the study of primate behavior? American Journal of Primatology, 73(8), 703–719.
Whitehead, H. (2008). Analyzing animal societies. The University of Chicago Press.
鈴木努. (2017). R で学ぶデータサイエンス 8 ネットワーク分析 第2版 (金明哲., Ed.). 共立出版.